「それに、わたくしにここまで言うということは国王陛下とお父様に話を通していると考えてよろしいのですよね?」

「……っ」

「まさかこれはお二人の独断で? まぁ……随分と大胆ですこと」


フランソワーズの問いかけに、セドリックは苦虫を噛み潰したような表情で視線を逸らしてしまった。


「お、お父様やお母様だって、わたしの味方をしてくれるわ!」

「あら、そうですの」


フランソワーズはベルナール公爵と夫人に視線を送る。
しかしマドレーヌが、こんなことをするとは知らなかったのだろうか。
厳格な父もマドレーヌとフランソワーズを交互に見つつ戸惑っているように見える。

(物語ではこの段階でお父様や国王陛下の許可もあったはず……やはりマドレーヌは焦りすぎたのね。完璧な証拠を用意しないあたり準備不足は否めないわね)

フランソワーズは小さく息を吐き出した。
そしてあることを問いかける。


「それと何も学んでいないマドレーヌが〝アレ〟を守りきることができるのでしょうか? 今まで一度も祈りを捧げたことはありませんが」


アレとは悪魔の宝玉のことだ。
他国には事情を伏せているためアレと言ったのだが、シュバリタイア王国の貴族たちには十分伝わるだろう。


「はっ……やはりマドレーヌの聖女の力に嫉妬しているようだな。だがマドレーヌが完璧にこなせると言っていた。問題はない」

「当然です! わたしはフランソワーズお姉様よりもずっと完璧にこなせるはずだわ」

「あら……すごい自信ね」