セドリックがそう言うと、マドレーヌは一歩前に出てカーテシーを披露する。
それはフランソワーズと比べてしまえば拙いものだった。
しかし今はそんなことはどうでもいい。
大切なのは、両親を納得させてマドレーヌと結ばれることなのだから。
「はい。わたしはフランソワーズお姉様に虐げられることを恐れてこの事実を伝えられなかったのです」
「なんてひどいことを……!」
「フランソワーズお姉様はわたしに自分の立場を奪われると勘違いしていたんです。わたしは仲良くしたかったのにっ……!」
瞳を潤ませるマドレーヌは庇護欲を誘う。
セドリックはマドレーヌを慰めるように抱きしめた。
それを見ていた両親も同情している。
あんなにも褒め称えていたフランソワーズを責めているではないか。
このまま二人を説得できればどうにでもなるだろう。
セドリックはニヤリと唇を歪めた。
両親はフランソワーズがよかったのではなく、宝玉が守れたらそれでいいのだ。
そしてフランソワーズがいなくなったところで、それよりも強い力を持つマドレーヌがいれば問題はないのだと悟った瞬間、態度を変えてきた。
セドリックの心がフワリと軽くなっていく。
(フランソワーズが必要だったんじゃない。フランソワーズの力を欲していただけなんだ……!)