これまで美奈と沙羅に彼氏の写真を見せてとせがまれても、あんまりいい写真がなくてと誤魔化してきた。

今回だって、デートには行ったんだけど、やっぱり写真撮り忘れちゃったということもできたかもしれない。

つい見栄のために、片桐くんを誘ったのは失敗だっただろうか。

「おい、行かないのかよ」

私は前を歩く片桐くんのファッションに愕然とした。

休日に彼と出かけたことがなかったから知らなかったけど、そりゃあそうだ。

たぶん休日は彼にとって出かける日ではなく、家でゲームやコミック、ラジオの解体なんかをして過ごす日であって、外着なんて持っていないのだろう。

普段の学ランを着た彼がどんなにありがたかったか、私は失って初めて気がついた。

しかし、恥ずかしかったのは、住宅街から駅までの道のりと電車の中だけで、目的地につくと似たような服装に紛れて片桐くんの服装は没個性化していた。

隠れオタクの街中野。

アンダーグラウンドな世界へようこそ。