「おい、その辛気臭ぇツラどうにかなんないのか?」

私はびっくりしてその人物の顔を見た。

そして、すぐさま何事もなかったかのように前だけを向いて先ほどと同じスピードで歩き始めた。

まさか下校途中に片桐くんに声をかけられるなんて思わなかった。

「おい、宮瀬」

「……学校と学校の近くでは話しかけないでって言ったじゃん」

決して視線を合わせず小声で応えると、片桐くんはムッとした声で言った。

「悪かったな」

そのまま私のことを追い抜かそうとする片桐くんに、私は追い抜かれざま、彼に頼み事があったのを思い出して、「待って」と続けた。

虫が良すぎるかもしれないけれど、メールじゃ彼は返信をくれない気がした。

いや十中八九くれないだろう。


しかし、私の声が聞こえないのか彼は振り返らずにいってしまう。

私は半ば走って追いついた。

「……んだよ、話してるとこ見られたくないんじゃ、」

「今週の日曜日空いてる?」

「は?」

「何でも奢るから、その日1日私に付き合って」