「有月さんはここに来る前のデスゲームで死んだことになっているんだけど、実は注入された毒薬は仮死状態にする薬だったんだ」

「えっ、どうして?」

「簡単に言うとデスゲームに再利用するためだよね」

再利用という意味が分からず、私は黙って説明を聞く。

「つまり子供たちのデスゲームを見たいお客さんはたくさんいるけど、その子供たちを確保するのは思ったより大変ということだよ」

「どういうこと?」

「有月さんはどういう経緯でデスゲームに参加したの?」

「えっと、中学の校外学習で北海道に行ったときに遊覧船に乗って、その時に覆面の男たちに船が乗っ取られてそのまま……」

「じゃあ、たぶん外の世界では遊覧船の沈没事故として処理されてると思うけど、それって世間的には大事件だよね」

確かにテレビのニュースでは連日トップニュースになるはずだ。

「当然事件の隠蔽費用も莫大なものになるだろうから、そうして確保した大事な子供たちはできるだけ長く使いたいということだよね」

自虐的に微笑みながら真桑くんはある教室らしき部屋の引き戸を開けた。

中には学校の教室のように机と椅子が並べられ、机の上にはノートパソコンが置かれている。

「ここは自習室、ここのパソコンでは動画で授業を受けることができるよ。そういえば有月さんは何年生?」

「ちゅ、ちゅうがく1年です。さっき真桑さんは中等部と言ったけど、他にもクラスがあるんですか?」

「そうだね、詳しくは知らないけど、僕は外の世界では中学3年生だったんだ。年が変わったらもしかすると高等部に移動するかもしれないね」