ルルリちゃんがカードをめくろうと右手をテーブルの上で動かした瞬間、1枚のカードがテーブルの上を小さく舞い上がった。

テーブルの上でめくれたカードはハートの13だ。

「えっ、なに、これ……カードが濡れてる?」

ルルリちゃんはテーブルの一部が濡れていてその液体のせいでカードがテーブルに張り付いているのに気が付いたようだ。

「ふふ……わたしが……やったの。手と服の袖を……グリーンティーで濡らして。さっきルルリちゃんに……せまったときに」

「はあ、なんのために?」

ぶはっ!

目の前の視界が真紅に染まった。

口だけじゃない。目や耳からも血が吐き出されたのが分かった。

突然訪れたタイムリミット。

薬で毒の効果を止めていた分、一気に毒の影響が来たんだ。

手足にはもう何の感覚もない。

むなしく私の体は床に倒れこんだ。

「あおい!」

シュウくんが私の元へ駆け寄ってくるのが分かる。

私の命はあと何秒あるの。

でもあと一言、あと一言だけ言わないと。

血だまりの中で私は口を開いた。最後の言葉を言うために。

「……司会さん……ルルリちゃんは……ネコが選んだのと……違うカードをめくったよ」

「これは何という執念か。死の間際プレイヤー有月の指摘により、プレイヤー赤音は反則負けとなります。ゲームセットです」

「はあ!? この私が反則負け!? 私がカードの張りつきに気が付かないようにするためだけに仮死状態の薬のことを告げたっていうの?」

ルルリちゃんの絶叫が耳の中に響いてくるけど、耳に血が詰まっているのかかすかにしか聞こえない。

だめだ。もう口も動かないよ。

演技での騙し合いは私の勝ちだねってルルリちゃんに言ってやりたかったなあ。