「デスエンジェルが壊滅したのを知って、適当な相手で脱出ゲームを勝つ予定だったんだろうけど、残念だったわね」

シュウくんは私の方を振り返って申し訳なさそうにつぶやいた。

「すまない。あおいのことは妹と名前が同じだったからいっしょに脱出しようとしただけなんだ」

目の前の2人のやりとりはいったい何なのだろうか。

シュウくんはまるで心臓を握りつぶされそうなのかというほどに怯えている。

「デスエンジェルから奪った金の情報も渡す。だから(あおい)だけは解放してやってくれ」

大きなルルリちゃんの瞳が、恐怖に身を硬くしたシュウくんの顔をじっと見つめていた。

「うふふ、デスゲーム組織を潰すことが正義みたいな言い方するのね。今あなたの目の前にいる私はあなたがしてきたことの報いよ」

なぜルルリちゃんは私たちの前でこんな話をしているのかと私は考えていた。

下手をしたら私が警察に話してしまうかもしれないのに。

答えは私を逃がすつもりはなくまとめて殺すつもりだから。

気が付くと私はこぶしを握り締めていた。

「ふざけないでよ!」

叫んだ勢いそのまま私はシュウくんをグーパンチしていた。

シュウくんは不意を突かれたからか盛大に椅子から転げ落ちて、驚いた表情で私を見つめる。

「毒を受けてるのは私なのにシュウくんの頭の方に毒が回っちゃったの?」

「あ、あおい」

「見逃してくれるわけないじゃない。私たちは勝つしかないのよ。ルルリちゃんに!」

あぜんとするシュウくんを尻目に私はルルリちゃんを指さした。

「ルルリちゃんが毒で動けなくなったらその間はマッチしないんだから逆転できるかもしれないでしょ!」

あくまでネコとのコンビといっても、実質ルルリちゃんが動けなくなればカードはマッチしなくなるはずだ。

「私はだいじょうぶ。シュウくんが逆転するまで絶対に死なないから!」

先ほどとは逆に私の打撃でシュウくんの目に光が戻る。