「それとさっき赤音ルルリがカードをめくる前、その動作に違和感があった」

「ど、どういうこと?」

「ひらひらした服のレースに隠れて見えづらいけど、めくるときにルルリの手の下のカードが一瞬動いたように見えた」

ひそひそ声でシュウくんは続ける。

「あれは、もしかするとカードをすり替えているかもしれない」

シュウくんの考えでは、ルルリちゃんは掌の下にカードを1枚隠し持ち、それをネコが選んだ数字のカードとすり替えたのではないか。

しかし、そう考えた途端、私の頭に新たな疑問が浮かぶ。

「でも、仮にカードをすり替えたとしても、伏せられたカードの数字をわからなきゃ意味がないじゃない」

「いや、ルルリが伏せられたカードを確認するタイミングはあった」

そう指摘されて、次の瞬間私は自分たちの失態に気づかされる。

それは1回目と2回目のネコがカードを選んだ時だ。

私とシュウくんはネコが本当にカードを選ぶのかずっとその様子を注視していた。

そしてその間、ルルリちゃんは自分の近くにあるカードは覗き放題だ。

「おい、司会、赤音がさっきカードを覗いてなかったか?」

さっそくシュウくんが司会に確認する。

「その質問は一方のプレイヤーに有利になってしまうのでお答えできません」

司会は体の前で両掌を拡げてとぼける。

「それにもしそのような行為があったとしてもプレイヤー赤音の怪しい行動を指摘しないといけないのはそちらサイドですよね」

やられたと思った。

妖しい行動を指摘するというルールは逆に言うと妖しい行動に関してはお互いに指摘しないといけないことになってしまったのだ。