「それでは視聴中の皆さまお待たせいたしました」

仮面をつけた司会の男が声を張り上げると、ホールから歓声と拍手が沸き起こる。

しかし、ライブ会場のように煌びやかな電飾が施されているが、暗いホールの中に観客はいない。

何台ものカメラがホール内に設置されているだけで、歓声と拍手はカメラの向こうの視聴者のものがホール内に流されているのかもしれない。

私とシュウくんは暗いホールの中央、まるでボクシングのリングのように白いライトで照らされた大きなテーブルに導かれた。

ここが私たちの脱出デスゲームの舞台なんだ。

「今回脱出デスゲームに参加するのはなんとデスゲーム学園に落ちて1日で挑戦権を購入した強者、アイドルの有月蒼(ありづきあおい)!」

アイドルと紹介されたが、私はまだ研究生なので盛り上げるための肩書きだろう。

「そして今回彼女が選択したのはコンビ戦、そのパートナーも目立たず資金を貯めていたようです。このデスゲームでは伏兵となるでしょうか!」

シュウくんの紹介はあまりにさらっと流される。

特に強調することがなかったのだろうか。

「ねえ、シュウくん。どんな奴が対戦相手として出てくるのかな」

「ああ」

私も緊張していたけど、シュウくんの顔もこわばっているように見える。

事前にシュウくんに聞いていたが、脱出デスゲームは学園側が用意した対戦相手に勝てば学園から出られる。

その対戦相手は別のクラスの生徒の場合もあるらしいけど、組織側が用意したデスゲーマーの場合もあるらしい。

当然、組織が連れてくるデスゲーマーの方が学園の生徒より強いと思う。

今回はコンビ戦ということなので、対戦相手もふたり用意されているはずだ。