「お疲れ、甘いものでもどうだ?」

シュウくんが私のほっぺたにさっき交換したマーブルチョコの筒を押し付けてくる。

ちょっとうざかったけど素直に甘い物は欲しかったので起き上がって受け取ることにした。

「ありがと、お金は?」

「いいよ、そんなの。もともとただのおにぎりと交換したんだからただで返すよ」

「じゃあ、一緒に食べる?」

私は黒いチョコの筒をひねって開けると、手のひらの上に丸いチョコを何粒か転がして出した。

一粒口の中に入れると溶けだすチョコの甘さが魂に染み入るように美味しく感じる。

ふと聞き覚えのあるメロディーが耳に入ってきて曲の流れてきた方を振り向く。

その曲は休憩室のテレビから聞こえてきていた。

テレビの画面に映し出されているのは学生服を元にしたような赤いステージ服に身を包んだアイドルグループだった。

「あっ、ルルリ様、今日も神々しい」

ブルーファンタジア、私の大好きなアイドルグループで赤音(あかね)ルルリはブルーファンタジアの不動のエースだ。

「私がアイドルを目指したは赤音ルルリちゃんに憧れたっていうのもあるの」

イギリス人のクォーターらしくキラキラと輝く髪と白い肌は聖女のような美貌でファンを魅了している。

私よりひとつ上の14歳だけどとても落ち着いていて、年上のメンバーもたくさんいるのにその存在感はグループの中でも際立っている。

私はルルリちゃんのダンスや歌を見ているだけでうっとりとほれ込んでしまう。

こんなすごい芸能人に私もなりたい。そう思ってブルーファンタジアの研究生になってがんばってきたのだ。