ショーの始まりは熱狂ではなく沈黙からだった。

当然だと思う。真桑(まくわ)や審判だけでなく、周りの生徒たちも事態が飲み込めていない。

「はあ、ここで最高額の500万を賭けるって? 有月(ありづき)さん、自分がなにを言ってるのかわかってるの?」

「もちろんよ」

「有月さんはキューブをクローズしてるから負けたら支払いは1000万。ペナルティーと合わせて2000万のマイナスを抱えてアビスに落ちるんだよ」

「大丈夫、あなたはこの勝負を降りるから。私には半分の250万が入ってくるよ」

私のあなたはこの勝負を降りるという予言に真桑が明らかに不機嫌な表情で答える。

「はあ? 何を言って……」

そこまでやり取りを続けてから不意に審判が割って入る。

「ここでひとつ確認しておくことがある」

審判が急にしゃべり始めたので私と真桑は審判の話を黙って聞く。

「プレイヤー真桑の所持金は500万を超えていない」

そう、真桑はさっきの第3ゲームで400万勝てばちょうど1000万に到達すると言っていた。

つまり、所持金は今400万から500万の間のはずだ。

「この第4ゲームで500万の勝負を受けて負けた場合、プレイヤー真桑はアビス行きとなる」

「なっ、なんだって」

審判の宣告を受けて、真桑の顔色が変わる。

「ね、勝ち負けなんて関係ないんだよ。あなたはアビス行きだけは絶対に避けたいからこの勝負を降りるのよ」

「おいおいおい、どうして僕が降りるんだよ。そんなわけ」

「ううん、真桑くんは降りるよ」

「わかった、わかった。どうやら有月さんはこの勝負の勝敗の確率はイーブンだと思ってるみたいだね」

真桑はやれやれと言った雰囲気で両手を目の前で拡げてみせる。