「ふん、最後の最後で悪運が強いね。でも、これでまだ振出しに戻っただけだよ」

真桑の負け惜しみだが、実際にその通りだった。

私は第2ゲームまでで200万真桑に負けていたので、そのお金が戻ってきただけなのだ。

しかし、これで私の所持金はマイナスから最初のプラス20万まで戻すことができた。

「ふう、おめでとう、有月さん。これであとは有月さんが第4ゲームで最低の10万だけ賭ければ生き残り確定だよ」

確かに私が最後の第4ゲームで最低の10万円だけ賭ければ、負けても所持金は10万円だけ残る。

つまり私はもうこのデスゲームで生き残りの道を選択できるということだ。

「それでは両プレイヤー、キューブはオープンするか?」

けれども、私は考えていた。

「どうしたんだよ。もう消化ゲームなんだから早くしなよ」

シュウくんが言っていた演技で観客を沸かせるのがアイドルだということを。

幸運もあったが、今までのこの状況を利用すれば私は真桑に勝つことができる。

ここからが私のアイドルとしてのステージの開幕なんだ。

「このゲーム、私はキューブをクローズします」

「は?」

真桑だけでなく、周りの生徒たちからもざわめきが起こる。

本来クローズは受け側が賭金を増やしづらくするためのものだ。

けれども、賭け側の私の方がクローズを使ったのだからみんなはその意味を理解できないだろう。

「ははっ、わざわざアビス行きの条件を作っちゃうなんてね。訳が分からないよ」

そう、これで私は負けた時の支払いが倍になるので、最低の10万を賭けても負ければ20万の支払いで持ち金はゼロ。

ゲーム終了時のアビス行きが確定してしまう。

「じゃあ、僕はもちろんオープンするよ」

真桑のオープンされたキューブの数字は5だった。

私は安堵した。もし6であったなら、その場で負けがほぼ確定していたからだ。

私の推測が正しければ、自分の数字が6だったなら真桑は勝負を下りない。

「それではプレイヤー有月は掛け金の提示を」

さあ、舞台は整った。

「それじゃ、私はこの第4ゲームで上限の500万を賭けます!」

ここからが私のアイドルとしてのデスゲームショーの始まりよ。