「なんだよそれ。意味わかんねえ。借り作るのが嫌って言うんだったら、お前のチョコレートと交換でいいよ」

私が嫌だったことは貸し借りのことではないけど、このチョコが無くなるんだったら別にいいかと思った。

「……交換ならいいよ。胸ポケットにあるから勝手に取って」

「いい加減起きろよ。まだこの学園のことも色々と説明しないといけないのに」

呆れたようにシュウくんはテーブルに寝そべっている私の胸ポケットのチョコを探り始める。

「ちょっと。何でいきなり人の胸を触るのよ!」

私は反射的に起き上がって叫び声をあげる。

そこにはぼさぼさの髪で目まで隠れた男の子が立っていた。

「えっ、あなた誰?」

「おまえ、ほんとにいろいろとひどいな。ようやく俺のことまともに見たのかよ」

シュウくんの言うとおりだった。

あらためて思えば、シュウくんの意図はともかく、色々と助けてくれたのに私の対応はかなり人としてどうかしている。

「えっと、ごめんなさい。さすがに今のは私がひどすぎました」

私は深々と頭を下げる。

「いや、まあ、いいよ。こんなところにいると精神がおかしくなるやつもいるからな」

「はい、すいませんでした。気を付けます」

私はもう一度軽く頭を下げるとテーブルに着いて交換してもらったおにぎりを口にした。

期限切れのおにぎりだったが、ごはんはやわらかくて普通に美味しい。

「あの、ここのご飯はいつも期限切れのお弁当なんですか?」