「有月さん、何か好きなお菓子ある?」

「えっ、あっと、私、実はチョコレートが好きなんですけど、ニキビが出るからあんまり食べられなくて……」

「じゃあ、お姉さん、このチョコレートをください」

真桑くんは棚に並んでいた筒状の容器に入ったチョコレートを1本取るとおばさんにお願いした。

「チョコレートは1,500円ね。まいどあり」

会計を済ませると真桑くんは私にチョコレートをポンと手渡した。

「はい、有月さん。新しいクラスメイトへの僕からのプレゼントだよ」

さりげないプレゼントにきゅんとするが、そのマーブルチョコの黒い筒がここに落とされた時の毒薬の筒によく似ていて一瞬嫌悪感が走る。

「あ、ありがとうございます。その、今1500円って」

「ああ、ここの売店は外に比べて値段が高いんだよ」

高いどころなんてものじゃない。10倍ぐらいの値段だ。

「ちなみに外への脱出を掛けたデスゲームの挑戦権は1000万円だよ」

「い、いっせんまんって、私、お金持ってない……です」

「それは大丈夫。有月さんのお金はそのカードに入ってるから」

そう言って真桑くんは私の胸ポケットを指さす。

言われて確かめて見るとポケットの中に黒いカードが入っている。

「これが?」

「確かめて見たら? このカードリーダーを通したらわかるから」

教えてもらったようにレジのところにある機械にスキャンしてみるとディスプレイに残高120万と表示される。

「えっ、120万? なんですか、このお金」

「これは有月さんがここに落とされるときにやったデスゲームで視聴者のお金持ちが支払った投げ銭だよ」

「投げ銭?」

「動画で視聴者が配信者に払ったりするでしょ」

なるほどと要はデスゲームの活躍ぶりに払われる視聴者からの応援の様なものだと理解した。