「ありがとうございますね」



自分なりに作り笑顔で、受け取った。

両手じゃない、生意気に片手で。



刑務所に入ってまでそんな扱いされるとか笑わせんな、なんて一人で鼻で笑った。

どうせ、私のこと恐れてるんだろう。

別にそんな扱いをされるのは慣れてはいたし、全く、傷つきもしないのだけれども。



私が刑務所に入ってきたのが驚いて圧力にびびっているのか、それとも……

いや、ないな。もう、私と財閥の家族はほぼ他人に過ぎなくなったろうから。

私の家族が刑務官に何か圧力を掛けるような耳打ちをした―?ああ、絶対にそんなことはないだろう。


…私は恥をおかした、邪魔な虫に過ぎなくなった。



―今日も札束を握りしめて、食堂の方へと歩く。


この昼時には、本当に色々な人が通る。

ここにいる人は、何人も人を殺した殺人犯、強盗犯、罪をおかした人が、いる。


そんなことはわかっていても、自分も、同じ囚人服を着ているということが、なんだか、本当に不思議な感覚だった。

私の囚人姿を見たすれ違う囚人らに、鼻でよく、笑われる。



…笑われてもしかたないよ、お前は恥だ、生きてるだけで息を吸う度に恥なのだから。



ここに来てからは、死んだように、何も感じなくなった。身分差など、破壊された。

庶民、いやそれ以下の分類と今や同じである。ここにいる人は、全て、罪の重さ、罪を償うためにいる人ばかり。


でも、私は……?



―その時だった。



誰かの広く大きな胸が私の顔に当たる。