「ママは? どこにいるの?」
と、希ちゃんはキョロキョロし始めた。
「お兄ちゃん、ママを呼んで来たんじゃないの?」
恵くんは俯き、
「ママはいないよ」
と、呟いた。
「……どういうことだ?」
と、村井のおじさんが恵くんに尋ねる。
「パパには言わないで」
と、恵くんは前置きして、こう言った。
「ママには、パパより好きな人がいるんだ。集会に行ってくるって言ってたけど、多分……その人のところに行っているんだと思う」
「……小さな子を置いて?」
と、琳音のお母さんが言う。
「オレ達に預けているんだ。オレ達なら光の面倒が見られるからって。信頼されてるんだ」
「……」
「その話はもういいよ、光くんが落とされた話を聞かせてごらん」
と、おばあちゃんが話を戻す。
「うん」と頷き、恵くんは再び話し始めた。
「さっき、……何時頃だったか、急に停電したんだ。それもオレん家だけ。窓から周りを見ても、他の家は明かりがついていた」
「うん」
「驚いたけど、オレも希もじっとしていた。こういう時に慌てると余計に危ないって、パパがいつも言うから」