バスに揺られつつ、私達は眉間にシワを寄せて考えていた。







しばらくして、バスが内日暮村に着いた。

バスから降りて。

なんだか村の雰囲気が違うと感じた。



なぜかみんなソワソワしていて。

どこかへ向かっている。



「!」

「……? どうしたの、穂希」



私は空を指差した。

村に帰って来るまでは、見慣れた空だったのに。



「月が……」



駿翔くんは不思議そうな表情で、空に視線を移す。




「なんだ? あれ……」

「おばあちゃんが言っていた現象って……、このことかもしれない」




昼前だというのに。

月が出ている。




真っ赤に染まった月が。





「月の周りにあるの、あれ、何だろう?」
と、駿翔くん。




真っ赤な月の周りには。

同じく赤い輪が、ぽっかり浮かんでいる。




(私……、あれを見たことがある)




“くれない様”を目覚めさせて。

“くれない様”から逃げていた時。




雑木林を抜けて。

あの月を見たんだ。