米子さんはライターの火を自分の洋服や髪の毛に近づけた。

ジリジリと嫌な音を立てて、火は広がっていく。



“くれない様”はそれを見て、
「やめてぇ!」
と、叫ぶ。



だけど“くれない様”は。

まるで米子さんの体に吸い込まれていくように、米子さんの体内へ入って行く。





「米子さんっ!!!」






私が叫ぶと、米子さんもこう叫んだ。





「やっとこの恨みから解放されるのよ!!」






少し低い、おばあちゃんの声だった。

厳しくて、優しい、米子さんの声。




「米子さんっ!!!」




火が米子さんの全身を包む。

すると、“くれない様”の悲鳴が聞こえた。

高い、鈴が鳴るような声が、悲鳴をあげている。




「米子さんを助けなくちゃ!!」
と、村井のおじさんが上着を脱いで、米子さんに近寄ろうとした。

私も米子さんにかけ寄ろうとしたけれど、
「危ないよ!」
と、駿翔くんに後ろから抱きしめられる形で止められる。



大人達が火に包まれる米子さんを助けようとしていたけれど、しばらくして、米子さんは炎に包まれたまま倒れ、動かなくなった。