“くれない様”はジリジリと近寄ってくる。

急に怖い気持ちが出て来て、私は後ずさる。



「なぁに? あなた、さっきは威勢のいいことを言っていたくせに」



“くれない様”が笑う。



「穂希!」
と呼ばれて、振り向かなくてもその声がおばあちゃんの声だとわかった。



大勢の足音も聞こえる。

雑木林に、村の大人達がやって来たことがわかった。



「琳音ちゃん!!」
と、村井のおじさんが叫んだ。



「……うるっさい!! 私は、琳音じゃない!!」
と、“くれない様”がイライラして答える。



「わかっているわ」
と、米子さんの声もした。



見ると、米子さんが不自然に手を隠して立っている。

もしかして火をつけるための何かを持っているのかもしれない。

そう思って、
「米子さん、もう火は通用しない!」
と、叫んだ。



米子さんは私をチラッと見てから、“くれない様”を見つめて、
「“くれない様”に尋ねられても、答えないで!」
と、大声を出した。