祠の中から。
ズルッ!
ズルッ!
と、何かを引きずるような音が洞窟に響いて。
しばらく見ていると、祠の中から這うように出て来たのは、細い、女の人の腕だった。
「ひっ……!!」
私ののどから、声にならない悲鳴が漏れた。
腕は徐々に祠から這い出て。
頭髪が見えた。
ボサボサの黒髪。
その間から見えるのは。
ギョロリと睨む、真っ黒な瞳。
「……あはっ、はははっ……」
と、琳音の笑い声が次第にか細いものに変わる。
“くれない様”の全身が、祠から出て来た。
薄汚れた着物を身にまとって。
どういうわけか焦げくさい臭いを振りまきながら。
のろり、と立ち上がった。
裸足の汚れた足が、薄気味悪かった。
「……っ!!」
隣にいる琳音の、焦って生唾を飲んだ気配がする。
「ねぇ、くれるんでしょう?」
と、“くれない様”が呟く。