「私、“くれない様”の気持ち、少しはわかる」
と、私は目の前にいる“くれない様”を抱きしめた。


「!? 離して!」
と、ジタバタする“くれない様”に、抱きしめた腕の力を強める。



「孤独で、つらい時。誰も助けてくれなかったんだよね?」

「……!」

「琳音は、助けてくれる子なの」

「……」

「琳音は、そういう時にはそばにいてくれる子なの。だから、助けたい」



私の腕の中で、“くれない様”が大人しくなった。



「私の体に取り憑けばいいよ」
と、私は言った。



「尋ねてくれたら、今なら、返事をしてあげる」

「!」

「それで、一緒にこの孤独を埋めればいいよ」

「……」

「だから、琳音は助けてあげて」




“くれない様”が、次第にくすくす笑い出した。




「? “くれない様”?」

「あはっ、あはははっ!」



肩を揺らして笑う彼女は、
「だから嫌いなのよ」
と、吐き捨てるように言った。