「……ご先祖もご先祖だけど、あんたも相当な悪い人間だな」
男性がどこか面白がっているような口調で、米子さんに言う。
米子さんは顔色ひとつ変えずに、
「そうですね……」
と、返事をした。
「……だけど、あなた達に言われたくない」
「は?」
男性が米子さんに一歩、近づいた。
米子さんは眉間にシワを寄せている。
「私は悪い人間かもしれません。実際、嘘つきです」
「米ちゃん……っ!」
と、庵主さんが米子さんを見る。
「あなた方と距離を置くために、今まで本当の自分を隠していました。嘘をついて、騙して、あなた方が近寄ってこないように」
「……」
「だけど、あなた方だって人のことが言えるんですか?」
と、米子さんは皮肉たっぷりの口調で言う。
「何だよ、何が言いたいんだよっ」
と、男性が問う。
「笹川さんが亡くなった時」
米子さんの言葉に、おばあちゃんの肩がビクッと動いた。