「そんな……」

「……黛 夕子は家に火をつけられた時、命からがら逃げ出していますが、のちに自分の兄に殺された時も、火で焼かれて死んでいます」

「……!」



また本堂にどよめきが走る。



「だから火が苦手なんです。明かりも苦手だったはずだけど、もうそれは通用しないことがわかった」

「どういうことですか?」
と、村井のおじさんが再び尋ねると、
「穂希ちゃんが何度も“くれない様”から逃げられたのは、スマートフォンの明かりが偶然助けてくれたからなんですよ」
と、庵主が答える。



みんなが私に注目した。

私は、
「だけど、もう効果がないみたいなんです。だけど、火はまだ弱点みたいだった」
と、答えた。



「祠に閉じ込め火を灯すって、“くれない様”の弱点だからなのか……」
と、お父さんが私に呟く。

私は頷き、
「だから私、なんとか“くれない様”を祠に閉じ込めたいんだ」
と、言った。