「黛 夕子は……、一度殺されかけています」
と、庵主が言った。



大人達が口を閉じた。



「村の地主や、村人によって、家に火をつけられてね」
と、庵主は大人達を順番に見る。



「……!!」



米子さんは小さな声で続けた。



「……『内日暮村事件録』には、1869年に【黛 夕子殺人事件】が載っています」

「ん?」
と言ったのは、お父さんだった。



「確か、今、暮徳庵主さんは殺されかけた、と言いませんでしたか?」



米子さんは頷き、
「そう。本当は死んでいないけれど、黛の先祖が圧力をかけたんです」
と、お父さんに話す。



「圧力?」

「祖父に真実を全て書いてはいけないと、圧力をかけました。なぜかというと、黛 夕子は自分の兄弟に殺されているからです」

「!?」

「そのことを外部に漏らすことを、黛の家は何より恐れた。だから、【黛 夕子 殺人未遂事件】とは書かれていないんです」