「“くれない様”は明治のはじめ頃に祀られています。1884年……、明治十七年に、後に“くれない様”となる女性が殺されているんです」
「!!」
「まだ祀ったばかりの頃は、村人は失敗が多かったんです。火の見回り当番もなく、“くれない様”はよく目覚めていたそうです」
「……」
「だけどその頃はまだ、“くれない様”自身もよくわかっていなかった」
「どういうことですか?」
と、村井のおじさんが尋ねる。
「“くれない様”が人に取り憑いたのは、祖父が青年だった大正初期頃です。それまでは取り憑けることもわかっていなかったのかもしれません。取り憑かれて人が殺されたのは、この頃からだそうです」
「そんなことって……!」
「その時の村の人達は、取り憑かれた人間ごと殺すことを選択した。“くれない様”はそのことを知り、その体から離れたそうです」
「その取り憑かれた人は、助かったんですか?」
と、私は思わず質問していた。