琳音は大声で叫ぶ。



「ねぇ、聞いているの!? “くれない様”!!!」



琳音の声が、洞窟いっぱいに響いた気がして。

まるで世の中から弾き出されたように。

私の目の前には、孤独が広がっているみたいだった。



風がビュウビュウッとうるさい。

振り返り、洞窟の外を見ると。



(あれ?)



不思議なことに、雑木林の木々達の葉は微動だにせず。

静かだった。



(なんで?)



洞窟内ではこんなに風が吹き荒れているのに。





その時。

風の音に紛れて。

かすかに聞こえた。



「……くれない?」



琳音の声とは、違う。



琳音も私を見た。

私じゃない、と、琳音に首を振ったら、琳音はニイッと笑った。



「目覚めたんだ?」
と、琳音は嬉しそうに言う。




その笑顔に。

言葉に。

私はゾッとした。




「……ねぇ、くれない?」



声が再び聞こえる。