「それは、私の友人から説明してもらいます」
庵主さんは動じず、村井のおじさんから米子さんに視線を移した。
その視線の流れを、大人達は追う。
「米子さん?」
「何かの間違いじゃないか?」
「あの人が説明?」
庵主さんは、
「さぁ、米ちゃん」
と、米子さんを立ち上がらせた。
「……みなさん、私の祖父のことをご存知ですか?」
ハッキリとした口調で話し出した米子さんに、村の人達は驚き、目を丸くした。
米子さんはそれには構わず、
「私の祖父は作家の黛 圭一です」
と、ある本を手に掲げた。
その本は、『あなたくれない』が載っている、短編集の文庫本だった。
ざわつく会場内に、
「祖父はこの村を研究していました」
と、米子さんは続ける。
「全て、“くれない様”を知るためです」
そう言った米子さんに、
「……あんたの言うことなんか信じられないんだよ!」
と、野次を飛ばす男性がいた。