ふと、おばあちゃんが本堂のすみに注目していたから、私はその視線を追う。



「米子さん……」



風変わりを演じてきた米子さんが、しっかりした面持ちで本堂のすみに座っていた。



「穂希、あの人に近寄るんじゃないよ」
と、おばあちゃんに釘をさされるけれど、
「悪い人じゃないよ」
私は聞く耳を持たなかった。



暮徳庵主さんがやって来て、
「よく集まってくれました」
と、挨拶を始めた。



「今日、ここに集まってもらったのは、他でもない“くれない様”のことです」



そう言った庵主さんは咳払いをして、
「実は推測なんですが、“くれない様”から逃げ切る方法があります」
と、静かに言う。



「えっ!?」
と、本堂の中は大人達のどよめきでいっぱいになる。



「待ってください、暮徳庵主さん。どうしてあなたが知っているんですか?」



村井のおじさんが立ち上がり、庵主さんに挙手して質問した。