暮徳庵主さんに連れられて、私は家に帰って来た。
おばあちゃんが玄関先で暮徳庵主さんに文句を言っていたけれど、庵主さんは聞き流しているように見えた。
その日の夜。
私は、自分から駿翔くんに電話をかけた。
『もしもし、穂希?』
駿翔くんの声が聞こえてくると、涙が出てきた。
『もしもし? どうした? 穂希?』
「……うん、ごめん。聞いてる」
『泣いてんの?』
「泣いてないよ」
と、嘘を吐いたけれど、
『嘘吐かなくていいよ』
なんて、駿翔くんは優しい声で言う。
(好きだなぁ)
もしかして“くれない様”に殺されたら。
私、もうこの人と話せなくなる。
こうして電話することも出来なくなる。
「あのね、駿翔くんに言っておきたいことがあるんだ」
……こういう時。
顔を赤くして。
心臓なんかドキドキ跳ねて。
緊張と、不安で。
いっぱい、いっぱいになると思っていたけれど。