「……私には出来ません」
と、私は言った。



「殺すなんて……無理です」

「穂希ちゃん……っ」



何かを言いかけた米子さんに、私は真っ直ぐな視線を向けた。

米子さんは言葉を飲み込んだ。



「だけど、この状態が危険なことはわかります。さっきだって、“くれない様”にスマホの明かりは通用しなくなっていたから」

「……」

「このままだと、私は確実に“くれない様”に殺されるし、村の人だって……」



私は少し黙って、そしてこう言った。



「私は、琳音を助けたいんです」 

「……」

「自分が助かるために、琳音を殺すなんて出来ない」

「穂希ちゃん……」



「どうにか、“くれない様”を祠に戻します。そして……」



私は、米子さんと庵主さんを見た。

ふたりも真っ直ぐな瞳で私を見ている。



「“くれない様”の祠を壊します」




「えっ?」
と、米子さん。