庵主さんの言葉に、米子さんも頷く。
「穂希ちゃん、“くれない様”はあなたを見て『似ている』と言ったのは、恋をした大橋 寛太郎のことかもしれない」
「……っ」
「だけど、彼女が憎くて仕方がないトキ子のことかもしれないし、大橋 寛一のことかもしれない」
「両方だってあり得る」
と、庵主さん。
(そうか……)
だからなんだ。
愛おしいと言ったり、憎いと言ったり。
大橋 寛太郎に似ているから、愛おしいけれど。
トキ子や大橋 寛一に似ているから、憎らしいんだ。
(私には、その血が流れているから)
おばあちゃんも言っていた。
『……何を言ってるんだ。浩二さんにそっくりじゃないか』
あの言葉は、このことに繋がる……。
「あなた自身が呪いから助かるためにも、村が“くれない様”の怒りから助かるためにも、あなたには“くれない様”を殺してもらいたいのよ」
米子さんはそう言って、私に頭を下げた。