「そうよ。木の枝みたいに広がっているわよね」
頷く米子さん。
「あなたのお父さんの血脈を辿ると、大橋 寛次まで遡れるのよ」
と、庵主さんは言う。
「えっ? でもお父さんの旧姓って、大橋じゃありません。伊藤です」
「そうね。だけど、あなたのお父さんのお母さん、伊藤 光子さんがいるのよ」
「……?」
庵主さんは続ける。
「あなたのおばあさまの伊藤 光子さんの旧姓は大橋だった」
「!!」
「大橋 寛次とトキ子の孫の子が、あなたのおばあさま、光子さんなの」
「えっ!?」
「わかる? 光子さんは、大橋 寛一の玄孫で、大橋 寛次とトキ子のひ孫に当たる人なの」
(……そんなことって……!)
「光子さんが結婚したことによって、村にいる大橋姓はいなくなった。光子さんのご両親も他界されているから」
庵主はそう言って、私を改めて見つめる。
「大橋 寛太郎と寛次の顔が似ていたのかどうかは、私達は知りようがないけれど……、“くれない様”、つまり黛 夕子は知っている」