「えっ……、でも、花村 トキ子は寛太郎と婚約していたのに?」

「不思議な話でもないのよ」
と、庵主さんは言う。



「長男との縁談がダメなら、次男に嫁ぎなさいってことは、昔ではあったことだと思うわ」

「そうね」
と、米子さんも頷く。



「で、でも、私の家……、光本家は古いお家だっておばあちゃんから聞いています。ずっと遡れる家系図も、家の仏間にあるって……」

「へぇ、そうなの」
と、庵主さんは言うけれど、
「だけどあなたの血脈は光本のものだけではないのよ。わかるわよね?」
と、私をじっと見る。



「血脈……」



私が少し考えていると、
「血のつながりのことよ」
と、米子さんが教えてくれる。



私は「あぁ、それなら……」と、話し始めた。



「血のつながりで考えると、お父さんやおばあちゃんの生家(せいか)のことだって入ってきますよね。……お父さんやおばあちゃんだけじゃなくて、辿れば色んな人が血のつながりで繋がっています」