「……さっき話していたのよ」
と、米子さんは頷きつつ庵主さんに言う。



「“くれない様”を殺しなさいって。琳音ちゃんは諦めなさいって」



庵主さんは顔色を変えずに、またのんびりとした口調で、
「酷なことを言うのね」
と、言った。



「村のためよ」

「そうね。わかっているけれど」



米子さんは俯き、
「……そうよ、酷なことだって、私にもわかっているんだから」
と言って、
「だけどそれしか方法がないから」
と、呟いた。



「そうね。そうじゃないと、“くれない様”はまた目覚める。そして、あなたを狙うはずよ、穂希ちゃん」



庵主さんは私をまっすぐ見た。



「……? どういう意味ですか?」



私の問いかけに、
「話していないの?」
と、庵主さんは米子さんを見た。



米子さんは首を振る。




「これ以上、背負わせたくなくて」

「ダメよ、米ちゃん。あなたのそれは、優しさじゃないわ」