「もしもし、陽子さん? 私です」
(おばあちゃんのこと、名前で呼んでいるんだ)
おばあちゃんのことを村の人はだいたい名字で呼ぶから、意外に思った。
居間で電話をしてくれる庵主さんの隣で、私は聞くとはなしに聞いてしまう。
「お孫さんの穂希ちゃん、今、私といるの。あとでお家まで送っていくから、少し話したいのよ。遅くなるけれど、よろしくね」
おばあちゃんの声がした気がしたけれど、庵主さんは「はいはい」と、何度か返事をしたあと、
「じゃあね、またね」
と、一方的に電話を切った。
(すごい……、おばあちゃん相手に……)
「さっきは助かった、ありがとうね。徳ちゃん」
と、米子さんは言う。
「何があったの? 通りがかったら、あなた、めん棒かまえて立っているんだもの」
のんびりした口調で、庵主さんは言う。
「あの、お二人は?」
と、私が尋ねると、
「あぁ、お友達なの。私達」
と、庵主さんが言う。