取り出したお線香の束に、暮徳庵主さんはライターで火をつける。
揺らめく火を“くれない様”に見せて、
「その子を離しなさい! そして立ち去りなさい!!」
と、厳しい声を出した。
火を見た“くれない様”は、
「うわぁあぁああっ!!」
と、大声で叫び、私を離した。
そして走り去った。
私はぺたんとその場にへたりこんでしまう。
「しっかりしなさい」
と、米子さんが私の目を見る。
「あなたはまだ、生きているの!! また逃れられたのよ!!」
「米子さん……っ」
暮徳庵主さんはお線香につけた火を消して、私のスマートフォンを拾い、私達のそばに来た。
「米ちゃん、どういうこと!?」
「徳ちゃん、説明するから。お願い、力を貸して」
腰が抜けてしまった私を二人がかりで支えて、すぐそばの米子さん家に連れて行ってくれた。
米子さん家で。
暮徳庵主さんはスマートフォンでおばあちゃんに連絡を入れてくれた。