「えっ?」
「そんな明かり、いらない……!」
後ずさっていたのに、今度はずんずん近寄ってくる“くれない様”。
(どういうこと!?)
明かりが苦手なんじゃなかったの!?
近寄って来た“くれない様”は私のスマートフォンを掴み、乱暴に道端に投げた。
そして私の胸ぐらを掴み、自分の顔にぐっと寄せた。
息だけの声で、
「ずっと同じようにはいかないのよ」
と笑ってみせる。
「!!」
あぁ。
もうダメだ。
(私、これで人生が終わるんだ)
そう思った時。
「こっちを見なさいっ!」
と、声がした。
それは、米子さんの声ではなかった。
“くれない様”が振り返り、私も声の主を見る。
内日暮村にある、尼寺の住職さんだった。
(確か……、暮徳庵主っておばあちゃんが呼んでた……)
米子さんが暮徳庵主さんに向かって、
「火をつけて!」
と、叫ぶ。