「……よ、米子さん……」



「言ったはずよ! あなたには役割があるって!! 死んじゃダメ!!」



米子さんは調理器具のめん棒を手に、血走った目でそこに立っていた。



「……邪魔しないで」
と、“くれない様”が頭をおさえている。



そのおさえた手が震えている。



「邪魔されることは、不快なのよ……!」

「穂希ちゃんは殺させない!」
と、米子さんはめん棒をかまえる。



「なぜ? こんな子、いらないじゃない」



“くれない様”はギョロッとした目で、米子さんを睨む。



「いらない……、殺す、殺すんだから……、邪魔しないで……!」

「全てあなたの思うようになると思ったら、大間違いなのよ!」
と、米子さんは言う。



「あなたと穂希ちゃんは違う! 彼女には帰る家があるの! 守るべき家族もいる! 私達とは違うのよ!!」



「『私達』……」



“くれない様”は米子さんの言葉を繰り返し、俯いた。