「もう、黙って」



そう言った“くれない様”は、口元をふさいだ両手の力を込める。

そのせいで口からだけではなく、鼻からも息が出来ない。



「……っ!!」



私はもがく。

ジタバタともがいて、“くれない様”の両手をどかそうとする。



(苦しい……!)




呼吸することを奪われて、頭の中がパニック状態になる。

“くれない様”のこの腕は、本当は琳音の腕だとわかってはいるものの、パニック状態の私は、そんなことに構っていられなくて。



「んー! んーっ!! んーーーっ!!!」



“くれない様”の……、ううん、琳音の腕を、めちゃくちゃに力いっぱいぶつ。



“くれない様”は踏ん張って、全然両手を離してくれない。

見開いた私の目を、さらに顔を近づけた“くれない様”が、このうえなく嬉しそうに眺める。



「死ねばいいのよ」



“くれない様”は目を細める。



「あなたは大人しく、私の手によって死ねばいいの」