転んだ私の上に“くれない様”は馬乗りになる。
「……ひっ!」
“くれない様”はシィーッと口元に人差し指を当てて、にんまり笑っている。
「あなたを殺すのは、私」
「!!」
“くれない様”は小声で囁くように言う。
「愛おしくてたまらないけれど、殺したくて仕方がないのよ」
「!?」
“くれない様”は私の瞳をじっとのぞきこむ。
左右の目を揺らしつつ、私は、“くれない様”の瞳から逃げられない。
「こ、殺さないで……」
思わず、口からこぼれ出た本音だった。
「殺さないで、お願い……」
“くれない様”は指で私の頬を撫で、
「恐ろしいの? そんなふうに命乞いしないで」
と、優しい声で言い、
「あなたのことはもういらないって言ったじゃない」
なんて、まるで小さな子どもに諭すような口調で恐ろしい言葉を放つ。
「殺さないで……」
情けないとは思いつつ、再び懇願すると、
「黙って……」
と、“くれない様”はわたしの口元を両手でふさいだ。