「穂希ちゃん、私ね、祖父から言われているの。自分を守るなら、知識を身につけなさいって。そして、村人と距離を取りなさいって」
「……」
「風変わりな人間を演じるのを提案したのも祖父だった。人と距離を取るには、効果があったわ」
「どうして距離を取らなくちゃいけないんですか?」
距離なんか取らずに、みんなで協力すればいいのに。
米子さんは、
「私は、自分を守りたかったのよ」
と、眉毛を下げた。
「米子さん……」
「さぁ、もう帰りなさい。あなたのおばあさんに心配をかけたくないわ」
「はい」
玄関で靴を履いていると。
米子さんが、
「帰りは気をつけてね」
と、優しく声をかけてくれた。
「考えておいて。“くれない様”を殺害するか、しないか」
優しい声で、恐ろしいことを言われて。
鳥肌が立つ。
(米子さんは、本気だ)
と、思った。
本気で、“くれない様”を。
黛 夕子を。
殺したいと思っているんだ。