「夕子は褒められた人間ではなかった。だけど、それで殺していい理由には絶対にならないのに」
と、米子さんはため息を吐いた。

紅茶に視線を落として、
「成次郎も政一も、夕子と根本的に変わらないのよ」
と、悲しそうに言った。



「……」



私は米子さんに、
「“くれない様”は、村を恨んでいると思いますか?」
と、尋ねた。



「そうね。恨みはあると思う。癇癪持ちで怒りっぽいし、わがままな女性だったらしいから、自分のしたことなんて考えていないのよ。被害妄想も激しいのかもしれない」



米子さんは、
「その証拠に曽祖父は、夕子に村への恨み、つらみを散々聞かされているの」
と、言う。


だとしたら。

“くれない様”の目的は……。



「村への復讐……」

「え?」

「米子さん、私は不思議だったんです。私がすぐに“くれない様”に殺されないこと」

「うん」

「琳音の願った呪いより、“くれない様”には果たしたい目的があるんじゃないかって」

「……そうね」