「見落としたって、何をですか!?」
「……大橋 寛一よ」
「?」
どういうことなのかわからない。
大橋 寛一の何を?
黛 夕子を殺して、でも命からがら夕子は逃げて……。
「あっ」
「わかったみたいね」
「大橋 寛一は村人達と黛 夕子を焼死させるために、夕子の家に火を放ったって、『内日暮村事件録』には書いてあった」
「そうね」
「わらべ唄でも、二番の歌詞では完全に夕子はいない者になっているけれど」
「うん」
「大橋 寛一は夕子を殺せなかったことに、いつ気づいたんだろう? もしかして、気づいていない……?」
米子さんは、
「そう。それが謎」
と、満足そうに言う。
「その謎はもう解くことは出来ないかもしれない」
「え? でも……、火事のあと、遺体がなかったら気づきませんか?」
米子さんはキョトンとした顔をして、
「思い出して。あなたも読んだはずよ。米子の家族はあの日、大橋 寛一から貰ったお金を持って遊びに出かけたでしょう?」
と、言う。