翌日。

米子さんの家に向かった。



「見つけたのね、『あなたくれない』を」



米子さんは私にニッコリと笑いかけた。



「黛 夕子は、『彼女』ですよね。黛 夕子の最期も本当は『あなたくれない』の『彼女』のほうが正しいんですよね?」



確認するように尋ねると、米子さんは頷いた。



「よく調べたね。その分だと、1884年の事件も知っているのね?」

「はい。黛 成次郎失踪事件」

「うん」

「そして、多分その年に黛 夕子は弟の成次郎に絞殺されかけて、兄の政一に焼き殺されています。だから、『内日暮村事件録』には【黛 夕子 のちに焼死】って書いてあったんですね」



私に米子さんは大きく頷いた。



「祖父の圭一は、本当は『内日暮村事件録』で、全てを明らかにするつもりだった。でも、一族がそれを許さなかったみたい」

「……成次郎や政一のことが、明るみに出るから」

「そう」
と、米子さんは悲しく微笑んだ。



「……祖父は考えたのよ。両親を亡くした私を守る方法を」