1869年に十八歳ということは、黛 夕子は1851年生まれということになる。

1884年から1851年を引くと……三十三歳。

黛 成次郎ときょうだいであっても、おかしくない年齢差ではあるんだ。

もしもきょうだいだと仮定するなら、政一、夕子、成次郎という順番で生まれていることがわかる。



(黛 圭一や米子さんは、政一か成次郎の直系の子孫かも知れない……?)



そう考えて。

黛 圭一の詳しい情報が知りたくなった。

私はスマートフォンを取り出し、黛 圭一を検索する。



(……いっぱい本を出している作家なんだな)



小説家として、これだけ物語を紡ぐなんて。

単純にすごいな、と思っていると。



【短編集】という文字が目に入った。



黛 圭一の短編集は。

十冊くらい出ている。

何の気なしに短編集の中のタイトルを読んでいく。



【カエルと古時計】、【フクロウの名言】など動物が好きだったのかなと思えるタイトルが並ぶ中、目を引くそのタイトルがあった。






【あなたくれない】






「えっ……」