洞窟の中。

まだ薄っすら明るかった空には、太陽だって見えたのに。

この中には光が入らないのか、薄暗い。



洞窟の奥。

壁伝いの、中央。

小さな(ほこら)がある。



「これが、“くれない様”?」



琳音は祠に近寄り、しゃがむように中を覗き込む。



「り、琳音、帰ろうよ」

「は? あんた、私をひとりにする気?」

「違うけど」

「本当、薄情だよね」



琳音がため息を吐く。



「ほら、穂希、見てみなよ。“くれない様”がいるよ」

「私はいいよ」

「いいから、見てみなって」



琳音がこれ以上不機嫌になるのは避けたかったから、恐るおそる私は祠に近づく。

しゃがんで、中を覗くと。



そこには日本人形がいた。



「ひっ!」

「ビビりすぎだって」



汚れて、何の柄なのかわからない着物を着た、キレイな顔つきの女性の人形。

日本人形の前には、火が灯った太くて大きなろうそくが、二本置いてあって。

祠の中を赤く照らしていた。