「黛 圭一の本が間違っていたとか、あると思う?」
『いや、考えにくいよな? ……でも黛 圭一は意図的に間違いを書いたのかも?』
「意図的に……?」
『そう。黛一族は本当のことを知っていても、夕子のことでまだまだ隠しておきたいことがあるのかもしれない』
それはあり得る話だと思えてきた。
黛 夕子の最期をどうして隠すのか、それはまだわからないけれど。
隠したい何かを、私は知らないといけない。
そんな気がした。
翌日。
ひとり、図書館にやって来た。
黛 圭一の『内日暮村事件録』の二冊の本を持って。
私は読書室へ向かう。
黛 夕子の起こした事件と彼女が殺害された事件を、もう一度じっくり読む。
(何か、見落としがあるはず)
だけどその見落としはなかなか見つけられない。
目が疲れてきて。
本を閉じて、ぼんやり休憩することにした。
(“くれない様”は、私のところへやって来る……)