「勘違いはしないで」
と、米子さんは言う。



「甘えることが全部悪いことではないと、きちんと理解してね」

「?」

「私が言っているのは、“くれない様”に対して戦えるのはあなただけってことだから」

「えっ!?」



米子さんは真剣な瞳になり、声をひそめて言う。



「あなたは“くれない様”と会った。それでも生きている。目覚めさせた時も、琳音ちゃんを探しに雑木林へ行った時も、“くれない様”と会っているのに、あなたは逃げることが出来た」

「!」

「“くれない様”から逃げられる人間なんて、今までいなかった。あなたなら、“くれない様”の怒りを鎮めることが出来る」

「でも、でも! 私、よくわかりません。“くれない様”から逃げる方法もわかってないのに」



米子さんは私を見て、
「逃げられたんだから、何かがあったはず」
と言い、
「思い出してみて」
と、またココアを飲む。




何か?

何かって、何だろう?