「あなたは、小説家の黛 圭一さんのお孫さんで、黛 米子さんですよね?」

「……」

「図書館で読んだ黛 圭一さんの本に書いてあったんです。『最愛の孫娘、黛 米子』って」

「それで?」

「えっ? えっと……、米子さんが教えてくれた村のわらべ唄もその本に載っていました。それで私……、“くれない様”は黛 夕子だって思っています」



米子さんの表情は変わらない。



「だ、だけどわからないんです。米子さんが黛 夕子の子孫だと、一度は思ったんですけれど、それだとおかしいんです」

「おかしいって?」

「夕子は十八歳で大橋 寛一に殺されて、“くれない様”として祀られているから……、でもその前に子どもを産んでいるとは書いていなかった」

「……」

「そうなるとあなたも、黛 圭一さんも、夕子の子孫じゃないのかなって」



黙って聞いていた米子さんが。

小さく肩を揺らして、くすくす笑い出した。



「えっ? 米子さん?」