「……おばあちゃん」

「あんな人のこと、なんでそんなに気にするんだい」

「……」



まだ推測の域を出ないのに、話していいのか迷っていると。



「まぁ、いいさ。米子は村で生まれたはずだけど、大人になるまでよその町で育っているはずだよ」
と、おばあちゃんが答えてくれた。



「よその町?」

「そうさ。ご両親が亡くなって、お祖父さんと暮らすことになってね。まだ小さいうちにそのお祖父さんと村から出て行ったよ」



そのお祖父さんは、黛 圭一かもしれないんだ。



「でもお祖父さんが亡くなったらしくてね、米子はひとり、村に帰って来たんだよ」

「それっていつ? 私、子どもだったよね?」
と、お母さんがおばあちゃんに尋ねる。


「それは忘れたけれど、でも奈緒子はもう小学生だったね」

「そっか」
と言いつつ、お母さんはフライパンを振って、野菜を炒めている。



「米子さんの名字って、おばあちゃん、知っている?」



私は勇気を出して、聞いてみた。